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ルールと善意のせめぎ合い 
新年一発目は、珍しく真面目な話。
先日の有楽町の火災、新幹線をはじめJR各線に相当な影響が出たわけですが、そこからこんな話題が。
このグリーン車騒動、賛成派にしろ反対派にしろ、リプやらコメントやら見てると何故こうも胸糞悪い…ってのは言い過ぎか、こう「もにょる」のはなぜか、自分なりに考えてみました。
まず反対派は、発言者氏の出自やら政治思想やらを見てのヘイトスピーチに堕している向きが多いのが不快感の元かと。問題の本質そこじゃねぇから!イデオロギー関係ねぇじゃん!(後述しますが全く関係ないとは言い切れない気が(;^ω^)) 「こいつサヨだから」「叩きたいだけ」みたいな思考停止が多いのはいただけないですね。
「ルール守れ」「金払え」って意見は、正規料金払った乗客との不公平に言及する辺りまだ正論ですが、生活保護叩きなんかと一緒で、「自分たちがしている苦労をしないで良い奴らがいるのが許せない」という妬みが透けて見えるのが何とも嫌な感じ(´・ω・`)
一方の発言者本人及び擁護派にしても、「善意なのに」という自分たちの正義を錦の御旗に立てて押し通ろうとするように見えて、やはり良い印象は持てませんね。その「正義」に従わない車掌やJRを人でなしのように言う態度は傲慢にも映るし、全国の鉄道員やサービス業(特に接客)の人々を敵に回すと思うのです(´・ω・`)
擁護者の論調の殆どが「善意なのに」と「その程度のことで」で、「善意でも例外を是とする横車はNG(耐えてる全ての人に施しができない)」「その程度かどうか決めるのはおまえらじゃない」が反論者を着火させてるとは思いましたねえ QT @ardbeg32: @azukiglg むしろ私は「
— 加藤AZUKI=楠原笑美@ゴゴゴゴゴゴゴ (@azukiglg) January 4, 2014
「私は老人子供を大事に思って対策を提案したのに、車掌が判ってくれなかった」って「私はこんなに良心的で頭が回る人間なのに、車掌は人でなし」アピールに見えるからそら炎上するわ。例え与党議員の身内だろうが議員本人だろうが普通に燃えるやろ。
— ふらっとでぃふぇんす◆FlatJHtUB (@FlatDefense) January 4, 2014
双方の立場からのまとめとかいろいろ読んだけど、結論としては「言葉遣いは丁寧にしようね」ってことだったわ(´・ω・`) → /超混雑だった東海道新幹線の乗客が「立っているお年寄りをグリーン車に乗せるべきだ」とツイート→炎上
— じゃりねこ (@jyaricat) January 4, 2014
…結局言い方の問題かよ!(笑)
車掌や鉄道会社としても、公式な見解としてそれは出来ない、やるわけにはいかない事情があるのです。理由は以下のツイート参照。
サービス業の人間から言わせてもらうとお客様への「臨機応変」の結果できた「特例」が常態化させられてしまうのが怖い。一度だけなら損して得とれと飲みこめるけど2回目以降はただただ割に合わない仕事になる。
— はつゆき (@HatsuyukiBlue) January 4, 2014
今は亡き静岡鉄道駿遠線で元駅長OBの方が何かの本で証言していたのだが、地元の顔見知りだろうが一度でも無札で改札を通しちゃうと、次から厚かましくツケで乗らせろと要求してくる輩がいるので親切は禁物だったとの事。田舎ですごく「固い」駅員がいたりするけど大体がコレが理由だったりする。
— まも(スクーコは房暖) (@Kojimamo) January 3, 2014
こういう時であっても客に迎合する措置を採ったら、後で収拾がつかなくなる(今後、ちょっと遅れたぐらいでもゴネ得のネタにされかねない)ので、車掌は体を張っても阻止せねばならないのである……定員内搭乗を絶対逸脱しない旅客機と、新幹線は違う>RT
— 甘木@欅道居士 (@profenigma) January 3, 2014
サービス業の立場からすると、変な前例作っちゃいかんのよ。変に対応すると、次こーゆーことが起きた時に「前はやってくれた」って絶対モメる。
— すいけん583 (@Suiken583) January 4, 2014
私もサービス業、いやこの際だから言っちゃうけど関東の某鉄道会社で車掌をしているので、この立場から件のツイート内容そのものには反対であります。
ただ、そういう善意を否定しているわけではないのです。勿論人情としては座らせてあげたいのは件の車掌氏だってそうでしょう。でもそれをやってしまうと、後々上記の様なより大きな混乱を引き起こしてしまうから出来ないのです。酷な言い方かもしれませんが、現状では鉄道という公共交通システムは全てを救うことが出来ないのです(一例をあげると、乗り遅れた少数を容赦なく切り捨てることで、定時運行という大多数の幸福は守られています)。暴力性とまで言う人もいますね(;・∀・)
僕が鉄道好きかつ嫌いなのは、こういう非常時に顕になるマス装置としての暴力性。大義の前にはひとりひとりが踏みにじられていくことなんだよなあ。
— 小久保せまき (@semakixxx) January 3, 2014
これは確かに「優しくない」だの「頭が固い」だのの批判は出るだろうし、鉄道会社も我々鉄道員も、より多くの人(願わくば全員)が幸せになれる方法を模索すべきとは思います。「てめえらが余計な苦労背負い込みたくねえんだろ」って批判もあっておかしくはない(言われたら腹立ちますけど/苦笑)。
結局のところ、「ルール」と「善意」という2つの「正義」のぶつかり合いなので、そうそう簡単に答えの出るものではないのでしょう。戦争は不可避なんですかね?実際、「人でなし!」と言われて「わがまま!」と返す、という平行線な罵倒の応酬にも見えましたし。あとは両者の境界をどこに置くか、どこで双方が妥協できるかという問題に思えます。
正義と正義の対立は戦争以外では解消できないのと同根だからなあ QT @simulatokato: @azukiglg あーだめだわ この話の流れで続けたら偽善とか詭弁とか話してもどうにもならん流れが予想できる時点でダメだ
— 加藤AZUKI=楠原笑美@ゴゴゴゴゴゴゴ (@azukiglg) January 4, 2014
今回の例に対して、現時点で私の考えうる最適解、って言うか最も角の立たない方法は、「あくまで個人レベルというか乗客同士の自主的な発意・行動として、席を譲る動きを作る」というものです。表現が悪いですが、車掌が「お客さま同士合意の上なら介入の必要無し(ゆずり合いを止める筋合いは無い)」と見ないふり出来ればなお良し、ですかね。今回の発言者氏の最大の失敗は「車掌に要求してしまった」ことだと私は考えています。前にも言いましたが、現状、車掌及び鉄道会社側は、より多くの幸福を守る立場からこれに「うん」とは公式に言えないからです。勿論これには是正されるべき面もありますが、実際問題として出来ることには限界があることも理解して頂けると、いち鉄道員としては幸いです。
…なんか偉そうにごめんなさい(大汗)。
でもホント、「ルールVS善意」って問題、難しいですよね。今回みたいなケースならまだしも、人命が関わる事例だとなおのこと。
例えば「(列車の抑止をせずに)勝手に線路に入っての人命救助は正しいか?」という命題はひとしきり考えてみて良いんじゃないか、と思いますね。アニオタの方なら、「ストライクウィッチーズ劇場版の、艦長命令を無視して人命救助をした芳佳は正しいか?」って命題に置き換えても可(笑)。
この「ルールVS善意」の問題は、「自己責任VS人道」とか「規律・統制による秩序VS自由・平等による解放」ってイデオロギー対立に簡単に転化するんじゃね?という可能性に気が付いてしまって色々とアレ(苦笑)。前に、「イデオロギーは全く関係ないわけじゃない」といったのはここで、その辺改めて見ると、件の発言者氏の立ち位置からああいう意見が出るのは自然なのかな、なんて思わなくもない(笑)。まぁ政治思想的な話に踏み込むと収拾がつかなくなるのでこの辺で。
あー難しい。
長々と失礼しました。
Posted on 2014/01/06 Mon. 13:26 [edit]
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